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竜閑さくら橋から見える動輪マーク

竜閑さくら橋

散歩で通ったのですが、こんなところに橋があるのを全然知りませんでした。

2018年にできた橋だそうです。

竜閑さくら橋の階段を登っていくと、すぐ隣に古そうな橋がかかっているのが見えます。こちらは鉄道橋で、その上を山手線やら京浜東北線やらよくわからない電車やらがバンバン通っています。

結構な迫力があるので電車好きにはいい観察ポイントなのではないでしょうか。

さて、そのJRの線路が走っている橋をよく見ると、中央に何やらプレートのようなものが見えたので撮影。

家に帰ってからネットで調べたところ、橋は外濠橋という古い鉄道橋で、文字は「大正七年」と書いてあり、菊の御紋かと思った模様は「動輪マーク」でした。

外濠橋

外濠橋については、大正9年鉄道省東京改良事務所発行の『市街高架線東京万世橋間建設紀要』という本に外濠橋建設の詳細が載っているのを見つけました。

同書によればこの橋は「大正八年一月竣工し三月一日交通を開始するに至れり」とあります。後述する「丸の内鉄道橋記念塔」の説明板にも大正八年に架設とあるので、大正八年の完成は間違いないと思うのですが、プレートには「大正七年」と書いてありましたよね。

あれれ?

本には「計画より遅れて完成した」と書かれています。「大正七年」でプレートを発注したものの、計画が遅れて年を越しちゃったパターン? それとも単に大正7年には完成していたけど竣工式が年をまたいで1月になっちゃったという感じかな?


本の中に紹介されている写真に、件の動輪マークらしきものも写っています。


こちらは同書に掲載されている外堀橋の図です。

写真や図には立派な橋塔があるのですが、現在の橋にはありません。調べると、橋塔部分は撤去され「丸の内鉄道橋記念塔」として東京駅北口に移設されたとのこと。
参考:『外濠(日本橋川)にかかる鉄道アーチ橋について』日本橋(東京)の旅行記・ブログ by tsunetaさん【フォートラベル】

ただ、ストリートビューで記念塔を探したのですが、付近が工事中のようで確認できませんでした。工事で撤去されているようにも見えるのですが果たして……。機会があれば見に行ってみようと思います。

動輪マーク

外堀橋の動輪マークについて、国土交通省の日本橋川紹介ページに記述がありました。

かつての鉄道省の紋章が、橋の中央にあるキーストーンに見ることが出来ます。これは鉄道のために架けられたアーチ橋であり、昭和初期の建造物です。

へーなんて思って読んでいたのですが、調べたら鉄道省大正9年発足なので「鉄道省の紋章」として入れたものではないはず。そもそも動輪マークは国鉄時代にも散々使われているので「かつての鉄道省の紋章」という言い回しはおかしいですね。昭和初期の建造物というのも?だし、お役所なのに情報が少々あやしい……。

動輪マークは明治時代から使われていたようで、明治42年の『鉄道院職員服制ヲ定ム』という公文書には、鉄道員の制服のボタンや帽子の徽章にこのデザインが見られます。ボタンの規定には「金地に鉄道機関車動輪の形、押出し……」という表現が使われています。翌、明治43年の『新鉄道法令集』には活字で印刷された規定が載っており、帽子の項は「鉄道機関車動輪」という表現ですが、ボタンの項には「鉄道院機関車動輪」となっています。ボタンのほうの鉄道「院」は誤植のような気がします。


『鉄道院職員服制ヲ定ム』より


手元にあった国鉄の切符の地紋。動輪マークがありました。